上海・大寧商圏の新たな計画発表。近郊外型からの脱却へ?

 

 9月9日付けの東方網は、中国国内の機関紙『労働報』を引用する形で、上海市北部の大寧商圏の発展計画である『環大寧商圏』計画を紹介した。

 報道によると対象エリアは、南北は延長路から霊石路、東西は共和路から運城路の約2平方キロのエリアとなっている(下図参照)。

 

 現在計画されているプランとしては、大寧霊石講演北側に高級ブランドを中心とする百貨店、グルメエリア、リラクゼーション、高級オフィスなどを一体化した商業施設を建設することや、古い工場をアーティスティックスペースとして活用すること、別荘型オフィススペースや二階立てショッピングストリートの建設などであり、すでに宝華中心や大手家電メーカーのフィリップの本部が進出することが決定。さらにこのエリアには7,200平米の広場に「音楽噴水」を建設し、現代上海の要素を加えたランドマークとするという。

 またこの講演の西側には現在児童向けスポット『宝貝当家児童楽園』が建設されている。これは敷地面積2.5万平米のスペース内の本物そっくりに作られた都市内で、子供たちが「大人」を演じながら生活を体験していくというもの。3歳から15歳を対象に、子供たちのコミュニケーション能力や独創性を育てるという。

 

2級商圏からの脱却を図りたい近郊外商圏・大寧

 大寧商圏は、上海市地下鉄1号線の北側延長部分に存在しており、シェラトンホテルを含めた商業施設「大寧国際広場」や「上海馬戯場(サーカス場)」などのショッピングスポットやアミューズメントを有している。

 1号線沿線ということで、上海市中心部へのアクセスは便利などだが、現在はまだ旧市街地が残っており、商業施設やアミューズメントスポットなどの目を引く施設が少ないのが現状だ。

 ㈱矢野経済研究所が、同社発行のマーケティングレポート『中国エリアマーケティング分析~上海編2012年版~』における調査でも、「あなたがよく行く商圏?」に対する回答率が「8.7%」と、人気商圏の30~40%と比べると、明らかに見劣りしてしまう。

 また、「よく行く理由」に関する回答も、南京西路や徐家匯が「ブランドが充実」、「商業施設が充実」といった回答が多いのに対し、同商圏では「家に近い」という理由が50%以上を占めており、その主要顧客層が付近住民に止まっていることが分かる。

 これらは上海市近郊外商圏の特長といえる現象であるが、大寧商圏としては今回の発展計画によって、「上海市における新たな注目スポット」への脱却を図ろうとする狙いもあるようだ。

 まして、上海では数多くの商圏、無数の商業施設が立ち並ぶ中で、中心部だけではなく近郊外での消費者獲得競争が展開されている。そこで生き残るには、とにかく新たな、大規模な、そしてレパートリーに富んだ施設の建設が求められる。

 

 現在計画中の地下鉄16号線も、2020年には同エリアで1号線への乗り換えが可能となる(上海馬戯場駅)。そのためにも、現在のうちからより多くの消費者をひきつけるための戦略を進めたい、というのが実情だろう。

 この2年後に登場予定の商圏、どれだけの消費が見込めるのか、エリアマーケティングやブランドの進出状況などの調査から見極めていく必要がある。